トップ>スレ>編>ターン
1ターン
唐空 呑(とうから どん)
僕はバスの車窓から代わり映えしない町並みを眺めていた。
この街に隔離されてから大よそ一年ほどたったのだろうか
いきなり一人暮らしをしなければならなくなり、初めはいろいろあったが
今ではすっかり慣れてしまった。しかし、僕は未だに
この街が好きになれずにいた。
別にコンビニが近くに無いとか、娯楽施設が無いとかそんな不満では無いし(充実しているほうだと思うし)
物騒なのは困るが、別にそんなのはどこでも同じようなものだ。
僕が最もこの街を好きになれない理由それは、
この街で暮らしていると自分が人間として扱われていないんじゃないか
という被害妄想をしてしまうからだ。
ただ本があるというだけで今までの日常を奪われ、こんな辺鄙な街に押し込められるなんて
これじゃまるで囚人じゃないか
…まぁただの学生がウダウダ言ったってどうしようも無いわけだけど
僕は深くため息をし、窓に向けていた視線を自分の膝元にある雑誌に目を向ける。
「ヘンゼル亭のミニお菓子の家セット…まだ残ってるかな」
僕はこの街が好きではないが、一つだけ気に入っていることがある。
それは、旨い飲食店が多いことだ。
ただ単に腕のいいコックが集まっている訳ではない。
本の力を有効利用できないものかと実験的にやったのが大成功し
それに便乗するように、他の所持者が次々と店を出していった結果がこれであるだけ
「それにしても、男一人でケーキ屋か…」
いつからだろう?購買のパンで我慢できなくなったのは?
一年前までは食べ物なんて食べられればどうでもいいと考えていたのに
今では、この通り、放課後や休日はグルメ雑誌を片手に食べ歩きだ。
これも本の力のせいなのか?
だが、しかし、このセット実に旨そうだ。
雑誌に目を向けている間にバスは目的地近辺にまで来ていた。
僕はブザーを押し、運転手に次のバス停で降りることを告げた。
前のターン
現在のプレイヤーの前のターン
ターンテーブルに戻る
現在のプレイヤーの次のターン
次のターン