トップスレターン

23ターン

姫郡 久実(ひめごおり くみ)



【Link:唐空呑 19ターン】

警察に向かう『都会のネズミ』氏を見送った後──
頼まれるがままに、久実は『山羊のグローブの彼』をケーキ屋まで
送っていくことにした。
財布はコインロッカーに置いたままなので、申し訳なくお水だけ
いただいて…見ているだけで胸焼けしそうな彼の食いっぷりに
目を丸くしつつ、話を聞くことにした。

「えっと、私は中学2年の姫郡久実…『うりこひめ』です」
『とうから どん』…世の中には珍しい姓名の人がいるものだと妙に
感心しつつ、互いの学生証をチラと見せ合って名前と身分を確認しあう。
……
「あ、あの、ちょっとすいません」
手助けしてもらった恩もあるし、しばらくは黙って聞き役に徹していたが…
「ん?」
「お話やお気持ちはよく分かりましたし、賛同できる部分も多々あるん
ですけれど…ちょっとスケールが大きすぎて。能力を使った自警団活動や
ボランティアをしてる方々は何人か存じ上げていますが…まとまって
活動するとなると、大人の方の支援も必要になってくるし、学校の生徒会
みたいには、そうそう…」

『月のうさぎ』の皆川さん、何故か決して素性は教えてくれない
『ティンカー・ベル』さん、それから…ボランティアで児童施設にも
ときどき慰問に来てくれる『赤い靴』の君香さん…。
その他、何人か相談に乗ってくれそうな顔は浮かんだが…
今、彼らを紹介するのはさすがに気がひけた。

「どうだい?暇潰しのつもりでもうちょい付き合って見るか?」
そうそう、暇でもないのだけれど…幸い、今夜の食事当番は
同じ施設で暮らす友人のターンだ。
心配性の園長にも予め「少し、遅くなるかもしれない」と言って出てきて
いるし…。

「…分かりました。助太刀のお礼もまだですし、門限までの間なら」
久実は少しの間考え、ややあってうなずいて見せた。
多分、彼…唐空さんは自身の「燃費の悪さ」を恐れているのだろう。
1人KOしただけで、彼は力を使い果たしてしまう。
だから、いざという時の用心棒として…自分を必要としている、と。
そう内心で納得しながら、久実は立ち上がった。
「…あ、一つご注意を」
「何だい?」
「私の能力では…食べられる瓜は作れないんです。またお腹が空いた時の
ために、何かご用意されていっては?」

そう。
久実の生み出す瓜の蔓は…子供達の空腹を満たすためには使えない。
ましてや、民話の『瓜子姫』のように、綺麗な織物など…。

護ると言えば聞こえはいいが、私には、相手を傷つける力しか備わって
いない。
それが時々…ずん、と重くのしかかって来る。
ふう、と息をつくと、久実は振り向いて、出会ってから初めての笑顔を
唐空に見せた。
「さ、善は急げです。手掛りがありそうなところに行きましょう」

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