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7ターン
笠原 諸友(かさはら もろとも)
(死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねみんな死ね)
男はいつでも下を向いて歩く。
周りの視線を受けたくないから。
実のところ、人間はそんなに道ですれ違う他者について気になど留めてはいない。そんなことは分かっている。
でも男は、悪い方へ悪い方へ進む思考回路を止めるつもりなどさらさら無い。
――ほら、今の女は絶対俺のことを心の中で笑ったぞ。
――今すれ違ったカップルは、きっと「キモーイ」なんて言いながら後で俺を小馬鹿にするんだ。
本と出会い覚醒したのは、いつ頃のことだったか。虐げられ続けてきた人生の中で、数少ない幸せな時期だったと思う。
でも結局、持て囃されたのはその本の力だけで。自分自身は相変わらず嘲笑の的だと悟ってしまって。
心が容姿に影響を与えているのか。醜い容姿は心さえ醜く変えてしまうのか。
生きていく理由も目的もない癖に、死ぬ勇気すら持てず。
他人を心の中で見下し、貶し、罵倒する。
「なぁ、そこのデブ。お小遣いくれね?」
1人、暗い雰囲気で歩いていれば。絡まれてしまうのも別に珍しいことではない。路地裏などに連れていかれて、
「2000円ぽっちかよ。しけてやがんな」
ゴミクズのようにされて、放置されるのももう慣れたものだ。あまり現金を持ち歩かないのも、それが理由。
男達が去った後。溜息もつかずにゆっくりと立ち上がって、懐から本を取り出す。
突如として宙に現れた薬壺から中身を無造作に手に取り、傷を負った箇所に塗りたくる。
みるみる修復されてゆく身体の傷。『何もなくなった』ことを確認。黒いシャツ、血は目立たない。
そして男はまた街の喧騒の中を、下を向いて歩き出す。
(死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねみんな死ね)
何一つ、変わらぬままで。
――菩薩のような心で、その力を無条件に使っていたとしたら、一体どれだけの人を救えたのだろう?
だが男は、自分の為にしかその薬を使わない。
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