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52ターン
橘川 鐘(きっかわ しょう)
>「粘ってって……だから、私はきちんと家賃を払っています。誰に咎められるいわれもありません。
なぜ施設なんかに入らないといけないんですか」
宥める方向でいくつもりが、怒らせてしまった。
嘘を吐いているようにも見えない。管理人が取り壊しになる事を伝えていないのかのしれない。
>「私はいやです。他人は私を馬鹿にするか貶めるか陥れるだけ。それなら一人で暮らしていきます。
お父さんもお母さんもいないなら、私は一人で過ごしていたいんです。それが今はできているんです。
だから、帰ってください。施設になんて入りません。帰って!」
「……唐空君、今は混乱しているようだから出直そうか」
私は一端退くことを提案した。
少女の剣幕に圧されたからではなく、ある事に気が付いたからだ。少女が右手に握りしめた新書。
BOOKS能力者の能力発動の条件、それは本に触れる事――!
久実ちゃんも同じような事を思ったようだ。
>「一度建物の外から…窓から室内の様子を覗けるか、試してみませんか?
このままだと埒があかないし…向こうはもう既に、何か仕掛けて来ている
かも知れません」
>「…確かに今ならまだ仕掛けられる前に退くことは出来るか…」
一端退く流れにまとまりかけた時。大河原殿が扉を蹴破って突入してしまった。
状況は一変、大勢の河童のような生物(?)が現れる。
間違いない、これが少女の能力だろう。
>「もうこうなったら突っ込むしかない。佐川ちゃんと先生と共に彼女の部屋にに入ってくれないか
僕らがこっちを食い止めている間に、説得なり本を奪うなりしてくれ」
「おおっ!?」
いきなり河童の体当たりをくらった。
転げたついでに、メタボな私は廊下を角まで転がっていく。
角を曲がり死角になったところで、本に力を乞う。弱気を守り悪しき者を討つ妖精戦士としての力を――!
「――変 身!!」
服の中の本から放たれた異能の光が私を包み込む。
一瞬の後、私は透き通る羽根を持つ美少女と化していた。
メタボのおっさんに代わり、ようやく妖精美少女戦士のターンである。
私は魔法の粉を振りまきながらさも当然のように現れる。
妖精戦士ベルは事件が起こるとどこからともなく現れるのが定石となっているので、多分特に怪しまれることは無い。
「危ない!」
呑君に襲い掛かろうとしている河童に、蹴破られた戸の残骸をぶつけた。
私の魔法の粉がかかったものは、一時的に空を飛べるようになる。
そのうち、無生物については念動力のように私の意思で操れるのだ。
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ! 妖精戦士ティンカー・ベル参上!
共にここを食い止めようではないか!」
穏やかな口調のおっさんから、勇ましい口調の美少女へ変わったように見えるが――
実は外見と声以外何も変わっていない。もしも小説などの文章媒体なら同一人物なのが一目瞭然だろう。
しかし、人間は情報の大部分を視覚に頼っているという。
中でもメタボのおっさんと美少女は、世界でもっとも重ならない存在なのだ。
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