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28ターン
唐空 呑(とうから どん)
彼女のお答えは予想通りNOだった。
当たり前だ。初対面なのにいきなりこんな話をされた挙句
立ち上げてさえいない組織からの勧誘、僕だって断る。
だが、まぁまんざら脈無しではなさそうだ。
理由は彼女が断った理由、彼女はただ「実行するにはスケールが違いすぎる」だけで断った。
自分には向いてないとか、私情諸々と断る理由はあれども、それは挙げず。たったそれだけ
まぁオブラートに包んでやんわりと断ったという考えが出来なくもないというか
常識的にそうなんだろうが、彼女の場合は少し訳が違った。
先ほど僕らは同じ火中の栗を拾ったが、その目的は全く違った。
僕は脅威から逃れる為に彼女を利用しようと手を突っ込んだ。
だが、彼女はどうだろうか?彼女と都会ネズミの間には何のかかわりも無い
そのつもりになれば見過ごせる喧嘩に突っ込んでいったことになる。
そこから考えられることは二つ
1、正義のヒーローを気取った自警行為がしたい
2、自身の嗜虐心を満足させるため
この二つのどちらか、もしくは、両方に当てはまるのではないかと思う。
ようするに、彼女も能力を持て余している訳だ。
その答えに、勧誘は蹴ったがスリの件は協力すると言った。
「そんじゃ早速…」
と立ち上がろうとした瞬間、僕の足はピタリと止まった。
「…」
がーんだな。出鼻を挫かれた。
「しょうがない…持ち帰り用のケーキでも頼もうか」
虎の子の野口…今日の晩メシ代も含まれている以上
ここでは使いたくは無いが…と躊躇していると
やたらと傲慢そうな奴が入店するや否や、騒いでいる。
うるさいな…こっちは今苦渋の決断を…
と眉間に皺を寄せて考え込んでいると、視界を遮るように店員がメニューを掲示してきた。
話を聞くと、どうやらあの傲慢な奴がご馳走してくれるらしい
「…ガトーショコラ1ホール!一番大きい奴で」
ありがたい。あぁいうタイプのバカには是非破産してほしい。
「僕の問題はこれで解決した。善は急げというが、せめてケーキが来るまでは待とう」
再び彼女に座るよう促すと、僕はかばんの中から先ほどまで読んでいた雑誌を取り出した。
僕はそれをバラバラと捲り、店の地図が書いてあるページを開く
「ただ闇雲に探してもラチが空かないと思うんだ
多分だけど、やり口といい手際といい、犯人はそうとうヤリ手だ」
そういうと僕は先ほど喧嘩をしたあの場所に印をつけた
「となれば、僕以外にも被害者はいるはずだ。
どのへんで、どんな風にスられたのが調べれば、もしかしたら犯人のアジト
もしくは、狩場を突き止めることが出来るはずだ。」
僕は早速携帯を取り出し調べ始めた。
予想外だった。大漁…まさにそれだ。
まさかここまで節操の無い奴だとは思わなかった。
「まさか、こんな短時間でここまでやれるとは思っていなかった。」
無数の印が刻まれた地図を見ながらそんな言葉が漏れた。
だが、これで目的の場所がはっきりした。
「スリはここを中心に起こっていると見ていいだろうな」
僕が指をさした地点、それは怪奇スポットとして有名な幽霊長屋
なるほどアジトにするには丁度いい物件かもしれない
場所が分かった以上、あとはケーキを受け取って殴りこむだけだ
。
とそう意気込んだ瞬間、横から妙な視線を感じた。
「…知り合い?」
視線の先にいた妙なおっさんを指さして、僕は彼女に尋ねた。
反応から察するにクロのようだ。よく見ればさっきのチビっ子も居る
「…もしかして、聞こえてた?」
じっとりと脂汗が流れる。だって、このオッサン妙に気色悪いんだもん。
そこに割ってはいるように店員が持ち帰りようのケーキを持って来る。
「あの…もしかして興味とか湧いちゃいました?」
恐る恐る僕はオッサンたちに話かけた。
オッサンの様子から察するに興味深々とみて間違いは無いだろうな
連れていきたくは無いが、付いてくるに決まっているだろうな
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