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4ターン
狼原 良士(おおかみはら りょうし)
『こうして、狼は川に落ちて死んでしまいました』
『赤頭巾ちゃんは道草をした事を反省し、それからは道草をしなくなったそうです』
『めでたしめでたし』
「ああ、畜生。腹が減ったぜ……」
昼間であるというのにじとりと湿った空気が漂う、痛んだ畳が敷かれた六畳一間。
薄汚れたその部屋の中央に敷かれた、スポンジが剥き出しになった布団の上で男は力なく呟いた。
手近にある鞄を引っくり返しても埃以外は出てくる事はなく、
枕元に投げ捨てるようにして置いてあるマジックテープ式の財布を振ってみても、硬貨の一枚すら出てこない。
「くそ……この三日間、水とカイワレ大根しか食ってねぇのに何でこんなに金がねぇんだよ……」
働いてないから。
そんな全うな回答が出てこないのは何故かとは思うのだが、とにかく男は困窮している様である。
ぐぅぐぅと鳴く腹の虫を騙す為に水道に近づいたが
「……ん?」
蛇口を捻ったが、出るべき物が出てこない。
「……んん?お、おいおい、待てって。これ、本気か?冗談だろ……?」
もう一度蛇口を捻ったが、やはり水滴の一つも出てこない。
――――そう、いつの間にか、水道が止められていたのである。
この事態に、男の顔色が一気に青くなる。
食料だけならまだいい……だが、水が無いのは死活問題だ。人間は水なしでは一週間と生きられないのだから。
「これは、やべぇ……と、とりあえず外に出ねぇと。
不良狩りなりカツアゲなりして、何とか金を稼がねぇと……!」
こうして命の危機を感じた狼は、
サングラスを掛け、お気に入りのシャツを着込んで住処から外へと出て行ったのでした。
目指すは街の路地裏。カモと、狼気取りのカモが屯している空間。
はてさてそこではどんな出会いがあるのでしょうか?
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