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55ターン
佐川 琴里 (さがわ ことり)
・・・なんか最初の目論見よりも随分やばい。
いざとなれば昼間の出来事と同じように、自分の本の能力でスられた金を持ち主に戻せばいーや、
と思っていた琴里は、自身の浅はかさにここでようやく気づく。
交渉は決裂に終わった。被疑者は激昂し、人数に関して優位と思われた討伐隊は一気に形勢を逆転されたのだ。
野次馬根性で窓を覗き込んだ琴里は、その光景を見て早々に後悔し慌てて久実と詩乃守医師の元に戻る。
昼間のあの青緑の影。そして外にいた異形達。
それらはするりとイコールで結ばれた。スリの首謀者は間違いなく、目の前にいる彼女だ。
河童は象徴的な悪だと決め付けてかかったが、その主犯たる少女は、人の脆弱さや悲しさを塗り固めたような人間で、
「悪即断」という単純な原理は適用されない。
もんもんと考えているうち、後ろから絶望しきった声が響いた。
>「……逃がす気がないならそれで私を殺してください。」
詩乃守医師だ。無気力な彼女らしい、世の中の全てを諦めたような物言いに、琴里はカっとなった。
「死ぬとか殺されるとか、悲しいこと言わないで!」
これ以上ややこしくさせないためにも、人質志願者の前に立ちふさがる。必要とあらば足に食いついてでも止めてやる。
琴里は威勢で、河童の主人にも怒鳴った。
「君!警察が来る前にスリなんて馬鹿なことや止めて!捕まったら少年院送りだよ?!君はさっき、施設での生活を拒んだけど、
それと比べ物にならないくらい酷い場所だ!自由がない檻の中で、看守は君を陥れ貶め馬鹿にするんだ、犯罪者のレッテルを貼られた君を!」
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