トップスレターン

39ターン

橘川 鐘(きっかわ しょう)



>「ん?君は何処かで見たような。見てないような、いや見たような。」

大河原殿が私に奇妙な既視感を覚えている。
妖精美少女ベルの姿の私を見た事があるからだろう。なかなか勘がするどい。

「直接には会った事はないはずだがいつもうちの玩具を買ってもらって嬉しく思っているよ。
これからも宜しく頼む」

>「ほぅ、スリとは面白い。そんなに他人の物を強奪する遊びが流行っているのか。
いずれそのスリをする庶民にも会ってみたいぞ。」


「人が汗水流して稼いだ金を奪うなんていかんぞお!」

規格外の大金持ちに向かって汗水流して、と言ったところで良く分からないかもしれないが。
気付けば、琴里ちゃんが医者のような女性――優さんと言うらしい、を仲間にひきこんでいた。

>「詩乃守先生という貴重な良識派ゲットだぜ!おまけに姫姉ちゃんの簡単かつ的確な紹介まですませちゃいました。」

私は琴里ちゃんに向かって密かにGJ、の親指を立てた。

そして私たちは、幽霊長屋に向かう。
久実ちゃんと一緒にいた少年、呑君が場を仕切る。

>「早速中に入ろうと思うんだけど、その前に一つ
 とりあえず、中に入ったら基本固まって動こう。そっちのほうがもしもの時に対応出来る
 もっと細かく言うなら詩之守先生と琴里ちゃんはなるたけ後ろの方に」
>「んでその前に姫郡さんとオッサン、一番前が僕と大河原で行こうと思うんだけど」


さて、ここで一つ問題がある。
私には正体がバレてはいけない、という魔法少女の掟があるのだ。
まあ、能力を使う事態になったら場が混乱しているからどさくさに紛れてどうにかなる……なるなる。

「んじゃ…はじまりはじまりってことで」

「うむ、早速お邪魔しようか……」

と言い終わらない間に、扉は蹴破られていた。いきなり乱入者モード全開だ。

>「だから...少しは手加減...もうなんでもいいや。」

呼び鈴を押すも、案の定、返事は――無い。
いよいよ屋敷内に突入する。
様々な罠が侵入者を待ち受ける!……でもなく、何事も無く探索は進む。

>「ここ、小学生の間じゃ結構有名な心霊スポットなの。長屋にどこまで近づけるか度胸試ししたりね。
院長先生なんかあたしらが悪さすると『幽霊長屋に閉じ込めてしまいますよ!』って決め台詞。
でも実際目の当たりにすると、古き良き日本家屋なんだねぇ...安心したと言うか幻滅したと言うか。」


「ワクワクドキドキするようなものって、案外そんなものなのかもしれないな――
謎があるからこそ面白い」


>「次で最後の部屋だ。あそこに何も無ければ今日のところはお開きかなぁ。」

琴里ちゃんは退屈して眠たそうだ。

「油断は大敵だぞ。ボスは一番奥の部屋で待ち構えているものだからな」

と、冗談めかして言う。
自分で言っておいてなんだが、ここまで来て漫画のような展開はなさそうだ。
普通に考えれば、扉を蹴破った時点でビビッてこもっているのだろう。
緩んだ空気の中、最後の扉を何気なく開ける。

「失礼……どなたかいるかな?」


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