トップスレターン

31ターン

橘川 鐘(きっかわ しょう)


店に入ると、異様な光景が展開されていた。

>「おぉ、君達は私を歓迎する為に現れた庶民ではないかね?
いいぞ、私はこれからス・イーツなる庶民の食事を楽しむところだ。
君達の分も、金銭を払おうではないか
さぁ、そこの小姓。メニューを持ってきなさい。」


>「資本主義の悪しき権化、大河原万次郎!」

「何!?」

大河原財閥当主、大河原万次郎――彼による大人買いで、店の経営はかなり助かっている。
買いに来るのは使用人なので、本人を見たのはこれが初めてだが。噂通りの凄い眉毛だ。

>「大河原財閥の富をもってすれば専属パティシェを雇って食べ放題だろうに…
さてはあたしら庶民を馬鹿にしようって魂胆だな?
ねえ二人とも。こんな店出ちゃおう、きっとあいつ札束見せびらかしながらケーキ食うよ?!」


「う、うむ……そうだな」

店の経営を考えると、今後とも贔屓にしてくれるように挨拶でもしておきたいところだが
純粋な少女に大人の事情を見せるわけにはいかない。

>「君達の分も、金銭を払おうではないか」
>「貴方のことはこれ以降、若殿と呼ばせて頂く。」

大河原殿の提案に、琴里ちゃんはすっかり乗り気だ。
こうなれば私としても断る理由はない。

「やあやあすまない、お言葉に甘えて御馳走になるとしよう」

>「……ん、あの、家族の団欒に水を差してしまったようで申し訳ありません。
 それと、大河原さんも、その私みたいのが同席してよいものか……えと、ありがとうございます、ごちそうになります」


「何遠慮することは無い、と言っても払うのは私ではないが。はっはっは」

>「…ガトーショコラ1ホール!一番大きい奴で」
>「僕の問題はこれで解決した。善は急げというが、せめてケーキが来るまでは待とう」


一回外に出かけていた先客が戻って来る。
大河原殿は私達のみならず、先に店内にいた高校生らしき二人組のお代も持つようだ。

>「……私、詩乃守 優と言います。あの、よろしくお願います」

「私は橘川鐘、玩具屋の店主をやっている。
こっちは佐川 琴里ちゃん、うちの大事なお客さんだ」

こうして奇妙な顔ぶれのおやつの時間が和気藹々と流れていく。

ふと、興味深い話が耳に入ってきた。
高校生らしい少年は、スリの犯人の推理をしている。

>「あの…もしかして興味とか湧いちゃいました?」

私は親指を立てて満面の笑みで答える。

「ビンゴ! 奇遇だなあ、丁度私達もスリの犯人を捜そうとしてたところだ」

今度は、二人組の少女の方が、怒りのオーラを放ちながら琴里ちゃんに詰め寄ってきた。
というか琴里ちゃんの児童施設の先輩の久実ちゃんだ。

>「こ〜〜〜と〜〜〜り〜〜〜!?」
>「何してんのこんなところで!早く帰りなさいって…あ、こ、こんばんは」

「ははは、そんなに怒らないでやってくれ」

>「あの、この子がまた何かご迷惑を…?」

「迷惑だなんてとんでもない、いつも楽しませてもらってるよ」

久実ちゃんは、意外な人に話しかける。

>「あ、あの…その節はお世話になりました…えっと、
覚えていらっしゃいますか?
うちの施設の子が、墜ちて怪我をしたときに応急手当してくださって…」


>「琴里、あんた…この先生…と知り合いだったの?」

「いや、今そこで会ったばかりだと思うよ。
それにしてもよく集まったもんだなあ。
ここで会ったのも何かの縁だ、皆でスリ事件解明と洒落こもうじゃないか」


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