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58ターン
姫郡 久実(ひめごおり くみ)
【Link:詩乃守 優 54ターン】
ああ、そうか。
先生と少女は「似た者同士」…。
「本」を得てしまったがために隔離され、
何も無ければ手を差し伸べてくれるはずだった(かもしれない)
庇護者にも友人にも出会えず…ここまで来てしまった。
先生も、この世を倦んでしまっている人。琴里が言ったように
「貴重な良識派」では無かったのだ。
だけど、それでも。余計なお節介と言われても。
ここで黙って、人が殺されるのを見過ごすわけには行かない。
ましてや、彼女は施設の弟分の恩人だ。
【Link:佐川琴里 55ターン】
もう…遅い。
少女は既に、窃盗の罪を犯してしまっている。
今の状況を打破して、家捜しをすれば「証拠」は出てくるだろう。
どういう処分になるかは…司法が決めること。
【Link:勝川 隆葉 57ターン】
部屋に入ると、そこに彼女は居た。
…ここに来る途中、コインロッカーに寄らせてもらって
トイレで着替えが出来たのは良かった。
相手と対峙するのに、威圧的な武道着よりセーラー服姿の方が良い場合も
多々ある…色んな意味で。
(髪の毛さえ何とかしたら、けっこう可愛くなる子だな)
それが、久実の──状況とは不釣合いな第一印象。
しかし、もうここまで来たら相手にビビったりせず、度胸を据えるしかない。
幸い、少女は先生の言葉に驚いた様子を見せている。
横合いから迫ってきた河童の一体に対し、みぞおちに木刀を突き立てて
転げ回らせながら、久実は素早く目を動かし、観察を続けた。
右手には新書…友人が同じ本を持っていたような記憶がある。
確か、短編集だったはず…だとしたら、あれはフェイク。
そう、以前に関わった事件でも、同じ手を使った犯人がいた。
解決後、久実も「それ」を更衣室でこっそり試そうとして──
ある程度以上のボリュームを持たないと「無理」という結論に達し、
しばらくヘコんだことも…ある。
【Link:勝川 隆葉 57ターン】
>なれば、来た所に返すが相当でしょう
>かくなる上は口を封じねば!
>ディクティルさん、手早くね。それから、他の皆さん、早く
……!
もう、悠長に説得している猶予はなさそうだ。
人が本を使役しようとして、逆に本に呑まれてしまっている。
その本の内容が内容なら、尚更……!
【Link:橘川 鐘 56ターン】
>BOOK所有者である限り本を必ず体のどこかに隠し持っている
ベルさんの「粉」のおかげで、しばらくの余裕と、少女に動揺=
僅かな隙が生まれた。
>右手の新書と、胸を押さえる左手に力が入った
手近な河童の頭の皿を、木刀で唐竹割りに打ち据えると、
木刀をシュルリと蔓の状態に戻し…久実は少女との間合いを一気に詰める。
右手の「本」ではなく、相手の目をじっと見つめたまま、
彼女の胸を抑える左手首のツボをぐい、と親指と人差し指で掴み…
捻って極める。
中国武術の「按抓折腕」という技だ。
本気を出して腕を傷めさせることも出来るが、手加減しても相手は充分
抵抗が出来なくなる。
背後から近寄ってきた別の河童に、空いた左腕でしこたま肘鉄砲を
食らわせた勢いで、久実は左手を少女の襟元にすべり込ませた。
(背中に挟むのは案外難しい…ならば、やはり本物の隠し場所は…前!)
果たして、手ごたえは──あった。
久実は掴んだ紙の感触を、そのまま引っ張り出し、そして叫んだ。
「お琴、パス!」
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