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60ターン
詩乃守 優(しのかみ ゆう)
【Link:ティンカーベル 56ターン】
【Link:勝川 隆葉 57ターン】
【Link:姫郡 久実 58ターン】
気が付けば全てが終わっていた。少女は姫郡さんに取り押さえられ、少女の本は琴里ちゃんの手の中にある。
どうやら死ぬ必要は無くなったらしい。無傷で此処を出られるようだ。
私は取り押さえられている少女のそばのトランク、そして本を拾い上げる。
少女が本を手放したことにより私を殺そうとした河童は消えた。だから床にメスだけが刺さって残っている。
「……ん、ごめんなさい」
その謝罪の言葉は琴里ちゃんに対してのものだ。怒られた子どもの様にペコリと頭を下げる。
先程の『殺して』という言葉も本気で、今の謝罪の言葉もまた本気だった。
……そりゃあまあ、確かに、目の前で人が死んだら琴里ちゃんの様な小さな子には衝撃的だろう、トラウマ級だ。
「……それから、ありがとうございました」
この言葉は妖精戦士さんに対してのもの。再びペコリと頭を下げる。
結局飛ばなかったものの向こうはこちらを助けてくれようとした。ともかくお礼は言うべきだ。
【Link:唐空呑 59ターン】
ふと気付けば唐空さんが少女にお説教している所だった。いや、アレはお説教と言えない。
完全に上からの目線で少女を『責め立てている』。その唐空さんの物言いに無意識に言葉が出た。
「……唐空さん、貴方の言葉は正論ですが。私は嫌いです。それが例え罪を自覚させるためのものであってもです。
それに『正論』の言葉って意外と通じないものなんですよ?ましてそんな言い方じゃ……。
……一方的に暴力的な言葉で人を押し潰す事しか考えてないような言い方、反吐が出ますよ」
一瞬、私を此処に放り込んだ大人の顔が頭をよぎる。あまりに唐空さん言い方が似ていたからだ。
それだけ言うと、おもむろに姫郡さんに取り押さえられた少女に近寄る。
「……気を悪くしたならごめんなさい。ただ、個人的に気に入らなかったものでつい」
唐空さんに言いながら膝をつき、握っていた手を広げると翡翠色の一枚の葉があった。
内臓が捻じれる様に痛むがそれも一瞬の事、葉を精製した代償だ。この葉の代金は寿命4、5日と言った所か。
私はその葉を意識があるのかどうかも分からない少女の口に押し込むように入れる。
意識混濁、喪失に対して効くかやったことがないからわからないけど、多分悪くはならないだろう。
此処にいる全員の「何をやってるんだ?」という視線が突き刺さる。
「……ん、私の目的は子どもを治す事です。それがどんな子であっても私は治します。
……だから今、この子も治しました。本を取られているので能力は使えないでしょうが。
他にも怪我をした人がいるならどうぞ、治しますので。ただし子どもに限り、ですが」
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