トップスレターン

62ターン

橘川 鐘(きっかわ しょう)



久実ちゃんが本を奪い、琴里ちゃんがキャッチする。
一件落着――。

>「……それから、ありがとうございました」

「いや、あまり役に立てなくてすまない。しかしもう死ぬなんて言わないでおくれ。
琴里ちゃんが怪我したら治してもらわないといけないからな」

>「あぁそうだ…一つ聞きたいことがあったんだ」

呑君、満を持して入室。
正義の味方が敵を倒した後にちょっと格好良さげなことを言って話を締めるお説教タイムである。
……のはずだが、ケーキを持っているのはツッコミ待ちだろうか。

>「ちょっとこれも浮かせてもらっていいですか?」

「あ、ああ」

別にいいが何故にケーキ!?


さて、お説教タイムには鉄則がある。
事件の直接の被害者や過去に同種の事件にあってトラウマがある者が行ってはならないという事だ。
無関係なところからお節介に降って沸いて解決する正義のヒーローだからこそ、他人事としてちょっといい事が言えるのだ。
呑君もまた、金によって人生を狂わされた事があるのかもしれない。

>「……唐空さん、貴方の言葉は正論ですが。私は嫌いです。それが例え罪を自覚させるためのものであってもです」

ストッパー役は優さんに任せ……私はこっそり部屋を出て変身を解除した。

メタボのおっさんに戻った私は、何事も無かった風を装ってさりげなくまた部屋に入る。
妖精の粉の継続時間内で未だ浮いているケーキだけが、先刻までの戦闘の名残を残していた。
丁度、呑君と優さんの舌戦が始まりそうなのを、琴里ちゃんが阻止しているところだった。
琴里ちゃんはまだ幼いが、なかなか大人なところがある。

>「ね!ひとまず今日はもう暗いし帰ったほうが良いんじゃないかな!
それと、この女の子をここに一人ぼっちにさせる訳にもいかないし、誰かあたし達の施設まで負ぶってくれる人いない?!」


「いやはや、済まなかった。河童にもまれているうちに終わってしまったようだな。
せめてこれぐらいは貢献しよう」

そう言って、少女を背負う。

「人は時に金という魔力に振り回されて人生を狂わせる……。
BOOK持ちもまた、時に本の異能に振り回されて人生を狂わせる。同じなのかも、しれないな。
さあもう遅い、帰ろう」


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