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36ターン
姫郡 久実(ひめごおり くみ)
【Link:橘川 鐘 31ターン】
ここで会ったのも何かの縁だ、皆でスリ事件解明と洒落こもうじゃないか
(えええええっ!?)
店長の口からそんな言葉が出るとは予想してなかった。
特に自警活動をやってると聞いたこともないし…若い子たちだけで
動こうとしてるのを心配してくれてるのだろうか?いや、それなら
まず「危ないことはダメ」と制止するだろうし…。
大丈夫、だろうか?
人物としては充分信用・信頼できる小父様なのだが、だからこそ余計に心配。
【Link:佐川 琴里 32ターン】
「うへぇ、服伸びちゃったじゃない、どうしてくれんのさ」
一応この子も女の娘…その辺には一人前に気を使うらしい。
修復系の能力者に頼めば、それぐらいのことは何とかなると…
この街の住人なら分かっていて、そういう憎まれ口を叩くのだから
はねっ返りというか何と言うか…。
で、今度は何やら詩乃守先生に耳打ちしている。久実に聞こえないように
話しているのは、おそらくまた怒りの沸点を越えられるような話だから
だろう。
【Link:大河原万次郎 33ターン】
「そんなに他人の物を強奪する遊びが流行っているのか」
???
えっと…この人、日本有数の大財閥の一族…の御曹司、だったはず。
それだけの身分の人なら…それに見合った高等教育やら何やらを受けて、
どこに出しても恥ずかしくない紳士として…。
それとも、何か理由があって暗愚を装っているだけなのだろうか?
ひょっとすると…この人が『本持ち』になったのを一番歓迎したのは、
彼の親族や系列企業のトップ御一同の皆さん、なのかも知れない。
他人事ながら、久実は目の前で優雅に茶を啜っている男性が
気の毒になってきた。
【Link:詩乃守 優 34ターン】
「……ん、分かりました。でも危ないことは、駄目です。
私は、危険だと判断したらすぐに逃げますから、それでよければ」
あー…やっぱり。
久実は額と両目に手を当てて、がっくりとうなだれる。
いや、先生のリアクションそのもの、に対してではなく。
琴里が何を吹き込んだのかを想像して…。
「あの、先生?いえ、童話の世界には『ウィッチ・ドクター…魔法の
お医者さん』のお話はいくつもありますから、そう呼ばせていただきますね。
ご存知のとおり、この街の治安はあまり良くないです。外から、刑事さんや
お巡りさん達も派遣されて来ておられますけれど、皆さんが『本持ち』な
わけでもなく…『本』を悪用する人には対処しきれていないのが、現実
みたいです。で、市民有志で自警活動を行っている人達もいる、と」
それだけ説明すると、久実は改めて、相手の女性の目を見つめる。
「…そういうわけなので、本来ならご同行をお願いする筋合いでは
無いんです。
それでも…ということでしたら、危なくなったら仰ったとおり、すぐに
逃げてください。近くに警察があったら駆け込んでいただけると…
助かりますけれど、その判断はお任せします」
久実は頭を下げると、横目で琴里の方をジロリ、と睨む。
あれこれ小言を並べるより、こういう視線だけで全ての感情を伝えたほうが
効果的なこともあるのだ。
危機的状況に陥ったら、詩乃守先生に琴里を連れて逃げてくれるよう
頼みたかったが、さすがにそこまで申し入れるのは気がひけた。
【Link:唐空呑 35ターン】
先刻出会ったばかりだが…唐空さんは仕切るのと引っ張るのが上手い。
それだけは今までの一連の流れで久実にもよく分かった。
何につけてもテキパキ、キビキビとしているし、ソツがない。
しかし…それでも一抹の不安がよぎる。
久実が協力の申し出を受諾して、笑顔を見せたとき…
目の合った彼の瞳の奥は、決して笑っていなかった。
それは、大河原さんから鷹揚にスイーツをごちそうする旨を告げられた時も
同様。
相手を値踏みするような…見込んだのは能力や価値であって、人柄では
決してないというか…。
『もううんざりだ。こんなイカれた街で
平穏を保って生活なんか出来はしない。
誰もやらないなら僕がやってやる。
そういう組織を作って徹底的にこの街を変えてやる』
彼が一息にまくし立てた言葉の断片を思い出す。
…大丈夫、だろうか?色んな意味で。
じっくりと悩むヒマもなく、唐空さんは長屋の入り口を蹴破って
中に入るよう一同に促す。
「あ…警察に自警活動の届を出していますので、後で報告書さえきちんと
提出すれば…多少のことはお目こぼしされますので」
久実もそう同行者たちに説明し、ふう、と息を吐くと歩きだした。
鬼が出るか、蛇が出るか…願わくば、この事件が…援けを求める誰かの
SOSでありますように。
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