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34ターン
詩乃守 優(しのかみ ゆう)
【Link:唐空呑 28ターン】 【Link:姫郡 久実 30ターン】 【Link:佐川 琴里 32ターン】
自己紹介を終えた私は、なんとなしに周りの人の会話に聞き耳を立てる。
最近この近辺ではスリが多発しているらしく、2人組の男女はその調査を独自にしようとしているらしい。
2人とも見た目からして学生だろう。
まあ、私なんかは、何もそんな面倒くさそうな事件に態々首を突っ込まなくてもいいだろうに、と思う。
ほっといても警察がなんとかしてくれるだろう。この国の警察はそこまで無能では無い筈だ。
そんなことより、と言わんばかりに私はもふもふ、と、大河原さんに奢って頂いたケーキを頬張る。
ふわふわのスポンジに甘いホイップクリームの絡んだ苺のショートケーキ。
苺の微かな爽やかな酸味と、くど過ぎないクリームの絶妙な甘さ、そしてふわふわとした食感がたまらない。
こんな美味しいモノを食べたのはいつ振りだろう。思わず少し涙目になる。何せまともな食事さえ久しぶりなのだ。
がっつきそうになるのを押さえながら、一心不乱に小さく切り分けたケーキを口に運んでいく。
結局そのケーキを食べ終わるまで、周りの雑音など私の耳には届いてこなかった。
ふう、と満足気な溜め息をつきつつ紅茶を飲む。満ち足りた、とはこういう事を言うのだろう。
そんな事を考えていると、ふと、先ほどの2人組の女性と目があった。何処かで見かけたような?
私がそう思った時、彼女が、あ、と声を上げた。
>「あ、あの…その節はお世話になりました…えっと、
覚えていらっしゃいますか?
うちの施設の子が、墜ちて怪我をしたときに応急手当してくださって…」
「……ん、あ、あの時の」
私もそこで思い出す。一日に何人かの子どもを治療しているが、高所から墜落した子は珍しかった。
>「琴里、あんた…この先生…と知り合いだったの?」
>「いや、今そこで会ったばかりだと思うよ」
>「そだよ、さっきそこでおじちゃんがナンパした。」
私が言うより先に橘川さんと琴里ちゃんが彼女に説明する。ナンパはされていないが……。
「……ん、ナンパはされてませんけど、そういう事です。
あと、先生は止めてください。免許持ってるわけではありませんし……」
【Link:橘川 鐘 31ターン】 【Link:佐川 琴里 32ターン】 【Link:大河原万次郎 33ターン】
私が彼女にそう言った直後の事だった。
>「それにしてもよく集まったもんだなあ。
ここで会ったのも何かの縁だ、皆でスリ事件解明と洒落こもうじゃないか」
おかしな台詞が橘川さんの口から放たれた。……? 私は紅茶を飲みながら思わず首をかしげる。
橘川さんの言う『皆』には私は含まれているのだろうか? 含まれていないのならいいのだが、それを口にする勇気はない。
多分、それを口にしたら、きっと、ほぼ、いや、確実に巻き込まれる。
いや、だって、さっきも思ったけど、そんなの警察に任せておけばいいじゃないか。
そんな事を考えてた矢先の事、琴里ちゃんがこっそりと私に耳打ちしてくる。
>「あのさ、詩乃守先生。もし暇だったらあたし達についてきてくれるかな。
姫姉ちゃんてね、ハッスルすると激ヤバ。今まで人殺さなかったのが不思議なくらいなの。
隣りのお兄さんも負けず劣らずハチャメチャバイオレンスだし...。
あたしじゃ、ストッパー役なんて務まんないよ。お願い、一緒に行こ?」
そんなデンジャーな人達のストッパーなんて私にも務まるわけがない、
一言、確実に言えるのは、警察に行ってください、お願いですから。
しかし、私にも、ケーキをご馳走になった恩がある。まあ実際にご馳走してくれたのは大河原さんだけど。
スイーツショップの前で橘川さんと琴里ちゃんが声を掛けてくれなければこのケーキは食べれなかった。
だからと言って……そんな……面倒な、ことに……。
純朴な瞳でこちらを見上げてくる琴里ちゃん。その視線に、私の心はパキリと折れた。
「……ん、分かりました。でも危ないことは、駄目です。
私は、危険だと判断したらすぐに逃げますから、それでよければ」
こうして私も、この事件に(半ば強引に)巻き込まれていくことになった。
まあ、子どもたちが怪我したら治さなきゃだし。しょうがないかな……。
>「ほぅ、スリとは面白い。そんなに他人の物を強奪する遊びが流行っているのか。
いずれそのスリをする庶民にも会ってみたいぞ。」
「……ん、あの、大河原さん? スリは遊びじゃなくて一応犯罪なんで……」
大河原さんの呟かれた常識はずれな言葉に、小さな溜め息を吐きながら、一応突っ込んでおいた。
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