トップスレターン

64ターン

勝河 隆葉(かつかわ・りゅうは)



【Link:姫郡 久実 58ターン】

一瞬の隙を稼げればいいと思っていた安っぽい仕掛け。
しかし、それでは一瞬すらも稼ぐことはできなかった。

「痛っ……!?」

まさに一瞬の出来事だったと思う。
セーラー服の少女が、シャウさん(バリトン歌手)の皿を緑色の木刀で打ち据え
→瞬間移動するかのように私の目の前に現れ
→私の左手をつかみ
→捻って
→激痛が走った。

さらに、助けに入ろうとしたKAPP(プロレスラー。リングネーム)に肘打ちを食らわせ、
→手が襟元から私の胸に……。

胸に、といっても、別に18歳未満お断りの展開ではない。
私は、右手にはまったく関係ない新書本を持ち、本物の『本』は胸元に仕込んでいて、それが見破られた。
それだけの、つまらない話だ。

本が掴まれ
→引きずり出されて
→本が私から、はな
              れ

                て



みんないなくなった。
KAPPも、パッパさんも、ディクティル氏も、チュチさんも、シャウさんも。
みんないなくなってしまった。


何のことはない、本をとられて私の能力が強制的に解除されただけだ。
だが、それは私に強烈な無力感と脱力感を与える。
冷静に考えたならばこの感覚も、能力解除の際の副作用を錯覚しただけだが。
今の私に、冷静に考えている余裕はなかった。

【Link:唐空呑 59ターン】

青年が私に何かがなりたてている。
どこか聞き覚えのある声。最初のチンピラじみた声の男(おそらくあれも演技だろうが)だろうか。
彼なりに何か憤るところがあったのだろうけれど。
残念ながら、今の私の朦朧とした意識では彼の発言は半分も聞き取れなくて。
だけど、ひとつだけ理解できたことがあったから。

「そう」

最後に青年を見据えて、言ってやった。

「あなたも私に生きるなというのね」

発言と同時に、意識が完全に闇に飲まれるのを感じた。
反論は後でゆっくり聞こう。聞く機会があったら。











【Link:詩乃守 優 60ターン】

……。



……苦い。

何かが口にねじ込まれたと思ったら、それが強烈な苦味を持って私に襲い掛かってきた。
あの、私意識を失ったばかりで反応できないんですけど。
「苦っ!?」とかいう感じのリアクション芸を期待してるならよそにお願いできますか。

と、間抜けな反応を脳が返していたところ。
おや、なんだろう。なんだか体が楽になった、ような……。
良薬は口に苦しという。ということは、今のものも良薬だったのだろうか。

とはいえ、さすがに一気に目が覚めるほどではない。
昏倒が睡眠に変わるぐらいの効果しか今はなかったようだ。
まあ、体の回復という意味では段違いだろうけれど。

眠りの中で、私は夢を見る。
今度は、いつもの過去の夢ではなく。
どんな夢だったかは覚えていないけれど。

夢の中で私は、笑っていたような気がする。

  【状況説明】

翌日。日が高く上るころ。
久実のスマホに一通のメールが届く。
発信者は、少年課の担当者である若年の刑事、井沼。
自身もBOOKS能力者である彼は、瓜子姫のよき理解者の一人だ。
ちなみに本は『いぬのおまわりさん』。
本と絡めてイヌヌマと言い間違えられることが多いのが悩みの種だとか。

話がそれた。

メールの内容は、まとめると以下のようなものだ。

・役所に照会した所、幽霊長屋に少女……勝川隆葉が住んでいること自体は書類上も間違いはなかった。
 食料の通信販売の宅急便なども頻繁に届いていたようだ。
・幽霊長屋の管理人は先日亡くなり、親戚たちが遺産相続でもめている。
 が、長屋を取り壊すこと自体では一致しており、これは決定事項と見ていい。
・管理人の親戚たちは長屋に人が住んでいることを把握しておらず、隆葉に連絡が遅れたのはそのため。
 隆葉が外部に連絡を取っていなかったのも影響していると思われる。
・隆葉の自宅からは衣類などの生活用品一式のほか、数十万円分の現金が発見された。
 状況的に現金はスリによって入手したものと思われるのだが、確実な物証としては扱いにくい。
 現金輸送車やATMでもない限り、お札のナンバーをまともに控えている事などまずなく、どこから入手したものかは分からないからだ。
 (一応こっちで照会はしてますけど、あまり期待しないでください。とは井沼氏談)
・スリ事件の被害を見ても、現金だけがきれいにすりとられており、彼女が本当にスリの犯人であったとしても他の物証が出てくるとは考えずらい。
・よって、彼女の今後については、彼女に「話を聞いて」、その結果によると思われる。最も重くて能力者少年院送り、
 軽ければ保護観察程度で済むだろう。


ちなみに、隆葉はこんな話がされているとは知らず……いや、想像はしているかもしれないが……静かに眠り続けている。

【シナリオラストの自由選択肢。勝川隆葉をどうしよう?】

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